シリウス祭の一日

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生きもの? 生きてる? しゃべる? 意思がある?
影のようで影じゃない。
まるであなたの心をうつす鏡。
カガンズはそんな不思議な子たち。

秋の恵みに感謝。
冬を迎える準備。

山があかく染まった秋。
今日はやがて来る冬に向けた「シリウス祭」の日です。

ミラーボールのあちこちから歌が聞こえてきます。

おおいぬシリウスおいでませ

おおいぬシリウスかけぬけろ

秋を楽しみながら、みんなで冬支度です。

0.シリウス伝説

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ミラーボールには、冬と共におおいぬの精霊シリウスがやってくる伝説があります。
シリウスは雪のように真っ白なおおいぬの精霊です。

さて、ここでカガンズたちに伝わる昔話です。

大昔、おだやか村が出来たばかりのころ。
世界を旅していたシリウスがミラーボールに辿り着きました。
長い長い世界を渡る旅でケガをしていました。

「不思議な君たちよ、ここで少しだけ休んでもよろしいか」

シリウスのケガを見たカガンズたちは言いました。

「やや、これは凛々しいおおいぬ様。
 長い旅路を走り抜けて、たいへんお疲れのご様子。
 少しだけと言わず、ケガが治るまでゆっくり休んでくださいな。
 焼き魚やスープはいかがでしょうか」

カガンズたちはシリウスのケガが治るまで、手厚く手当てや食事を提供しました。

冬の終わりに、シリウスのケガはすっかり治りました。

春の訪れと共にシリウスは他の世界へ旅立ちます。
その際に、シリウスはカガンズたちに言いました。
 
「君たちと過ごす冬はとても良きものだった。
 美味しい食べ物に、暖かな寝床、楽しい歌や絵をありがとう。
 しかし、吹雪や雪崩が大変だったご様子。
 これからは、このシリウスが冬の君たちを守ることにしよう」

それから毎年、シリウスは冬を見守る精霊となりました。
 
そんなシリウスへ歓迎と感謝の気持ちを込めて、毎年、秋の終わりに「シリウス祭」が行われるようになりました。

1.シリウス釣り大会

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ここはしんこきゅうの森とおだやか村の間を流れる川のほとり。
カガンズたちが釣り道具を持って集まっています。

毎年恒例、「シリウス釣り大会」のはじまりです。

「さぁ、みんな、シリウス釣り大会だよ! よ~い…はじめ~!」

センがメガホンでカガンズたちに号令をかけました。  

釣り大会のルールは簡単。
制限時間内に釣れたお魚のなかで、一番大きい魚を魚拓にしてシリウス祭に奉納するのです。
 
センの号令で、集まったカガンズたちが一斉に川に向かって釣竿を振ります。
さて、誰が一番大きな魚を釣り上げるのでしょうか?
楽しみですね。

センは時間係で、釣りをしながら時々時計を見ています。
ホーンは釣り初心者のカガンズたちに釣竿の使い方を教えながら釣りをしています。
マーチはマイペースに釣りを楽しんでいます。
 
釣り大会に参加しているカガンズたちの中には、大きさに関係なく魚が釣れたことに大喜びしている子たちがいたり、釣れた魚の数を競っていたり、それぞれの楽しみ方をしているようです。

ホーンが釣りに集中しているみんなに声をかけます。

「みんな~、お魚の子どもは逃がしてあげてくださいね~。
 おとなの魚が釣れたら、
 ロクメさんたちがシチューの具材にしてくれますからね!」

「「は~い!」」

「フフフのフン、
 マーチさんが一番大きなお魚さんを釣ってみせようかしらん」

マーチは自信満々ですね。

「ホーン! おさかなさん、つれたよ~」

幼いカガンズがホーンに嬉しそうに釣った魚を見せてます。

「よく釣れましたね! その調子です!」

ホーンは釣ることよりも教えることが楽しいみたいです。

センが時計を見ると、あっという間に制限時間も残りわずか!
 
その時です! センの釣り竿に反応が!

センは急いで釣り竿をつかみます。すごい勢いで引っ張られます。
これは大物の予感!
負けじと釣り糸をまくセン! しかし、魚の引っ張る力も負けません。

「むむ! このままだと、取り逃がしてしまいそうだ!」
「セン殿~~~~~! マーチさんが助太刀に参上なのだぁ~!」

マーチが駆けつけて、センの釣り竿を一緒に引いてくれます。

「マーチ!? ありがとう! よし、一気に釣りあげるよ!」
「心得ました~ん!」
「「せ~の!」」

 バシャン!

水面からお魚が飛び出てきました。これは大きい!
もしかしたら、いままでで一番の大きさかもしれません。

そして、ちょうど釣り大会終了の時間となりました!

「おっと!今年のシリウス釣り大会、終了の時間だよー!」

時間係のセンが大会終了の号令をかけて、魚の大きさ比べがはじまります。

みんなが釣り上げた、大小さまざまな魚が並べられていきます……
うん! やっぱり、センとマーチの魚が一番大きいですね!

会場にいるカガンズたちは「シリウスへのお魚だ!」と拍手を送ります。

「センさ~ん、やりましたなぁ~。
 この大きさ! センさんが一番ですぅん!」
「いや、僕だけじゃないよ。マーチも一番だよ!
 二人で一番の魚を釣ったんだから!」
「おやまのま!
 そう言ってくれると、マーチさんも嬉しいのですよ~」

さぁ、魚拓をする前に、センとマーチがお魚をふたりで抱えて、記念撮影です。
ホーンがカメラを撮ってくれます。

「センさん、マーチさん、撮りますよ! 3、2、1!」
 パシャ!
センもマーチも満面の笑顔の一枚が撮れました。

皆さんは、何かやり遂げたことはありますか?


2.美味しいシチューに色どりを

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つながる広場に、とても大きい鍋があります。
おや? 鍋の近くにはいくつかテントがありますね。
そばに「シチュー作り本部」と書かれた看板があります。 

どうやら、シリウス祭の最後に配られるシチューを作っているようです。
多くのカガンズたちが、行ったり来たりしながら食材の準備をしています。
 
おや、あそこのテントにロクメ、テイル、マルの姿があります。
全員にんじんをせっせと切っています…。
どうやらにんじんを切る係のようですね。

おお、ロクメとテイルが切ったにんじんはお花の形です!
これは「飾り切り」というやつですね。

「食べても美味しい、見ても楽しいシチューって最高だね~」
「釣り大会と、星駆け祈願……あと、倉庫の冬支度班か。
いっぱい頑張ったみんなが喜んでくれると思うと、楽しみですねぇ」

ロクメとテイルは器用そうにサクサクとにんじんを飾り切りしていきます。
おっと…? ふたりの横でマルは苦戦中のようですね。

「うーん……二人みたいに、きれいなお花の形にならない……」

悩むマルの手元には、お花の形になれず、細かくなったにんじんが残っています。飾り切りって難しいんですね。
マルは飾り切りに初挑戦なので、なおのこと無理もありません。

「ロクメ、テイル、少しいいかい?」
「おや、お困りの様子だね?」
「どうしましたマルさん?」
「飾り切りが難しくて……お花の形にできないんだ……」

悩むマルを見て、ロクメとテイルは言いました。

「そうか、マルは飾り切りに初挑戦だったね」
「そうだ、そんなマルさんにぴったりな飾り切りはこれです!」

そういって、テイルは料理の本を開きます。
開いたページには星の形になったにんじんが載っていますね。

「星の形……?」
「そう、星の形に切る飾り切りです!とてもシンプルな切り方なんです。
これなら、初挑戦のマルさんでもやりやすいと思いますよ!」
「たしかに……これならぼくもできるかも!」

テイルが紹介した飾り切りに、マルの不安が晴れてきました。
「ちなみにね、」とロクメが他のページをめくります。

「飾り切りは色んな種類があるんだ。
 花びらでも、桜のかたちがあったり。
 蝶々のかたちの”蝶にんじん”っていう立体的なものもあるんだ。
 あ、この写真がそうだね!」
「わぁ、どれも難しそうなのばかりだ」
「そう、なかなか難しくて、まだ練習中なんです。
でも、いっぱい練習して、いつか皆さんにお披露目するのが目標です!」
「おお、ロクメはすごいなぁ」
「すごい。できるようになったら教えてくださいね」 

ロクメの目標を聞いてマルとテイルは思わず拍手します。
すると、マルが「あっ!」とひらめいたご様子。

「そうだ!いろんな形があった方が見て楽しめるよね!ぼくは、星しかできないけど…ロクメとテイルには他の形の切り方をお願いしてもいいかな?」
「おお、それは名案ですね!」
「任せてください!」

マルの提案にふたりは笑顔で大賛成。

「ふたりとも、ありがとう!ぼく、いっぱい星のにんじん作るね!」

星、花びら、桜……いろんな形のにんじんが作られていきます。 
きっと、食べてもおいしい、見ても楽しいシチューができあがりますね。
 
皆さんも、飾り切りに挑戦して料理を華やかにしてみませんか?
おっと!飾り切りに挑戦する時はケガだけは気を付けてくださいね。


3.星駆け祈願

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運動場に多くのカガンズが集まり、にぎわっています。
これからシリウス祭の中でも大事なイベント「星駆け祈願」が開催されるのです!

これは、いろんな地区から代表のカガンズが選ばれ、誰が一番速くトラックを3周駆け抜けたかを決めるイベントです。
世界を駆け抜けるシリウスの姿に感動したカガンズが、「彼のようにたくましく走られるように!」とかけっこ競争をはじめたのが星駆け祈願の起源と言われています。

今年の走りを見たい、自分の地区の代表を応援しよう…様々な思いでお客さんがいっぱいです。
食べ物の出店もたくさん並んでいて、運動場は大賑わいです。

さぁ、皆さんが知っているカガンズの中で選ばれたのは、グナーです。
グナーは、この日のために、バーツとフロッケと一緒に特訓しました。
グナーにとっては、特訓の成果をお披露目する日でもあるのです!
 
「グナー、がんばるのだ~!」
「信じてるよ、グナー。君なら大丈夫」

バーツは大きく手を振って声援を送り、フロッケは静かに見守ります。

グナーはハチマキをぎゅっと結んで気合を入れます。

「バーツとフロッケとの特訓を頑張れたんだ! ボクならできる!」

さあ、代表者たちがスタートラインに並びます。
「位置について……よ~い、」
 パン!
号令の音が鳴り響き、代表選手たちが一斉に駆け出しました。
 
グナーは、好調な滑り出しです。
グナーを知っているカガンズたちは驚いていることでしょう。
走るのが苦手だったグナーが先頭グループに食いついているのですから。

とはいえ、グナーは1位から少し離れています。

「いい感じなのだ。
 グナーの持ち味をこれから出せたら、1位もいけるのだ」
「グナー。君の長所を生かせば、できるよ」

おや、バーツとフロッケは安心してグナーの走りを観戦しています。
何か秘策があるのでしょうか?

そうこうしているうちに星駆け代表たちは3周目にさしかかりました。
おや、先頭グループのペースが少し落ちてきました。
そこへ、グナーがどんどん追いついて…次々と抜いていきます!
おお、グナーのペースは変わりません!

グナーも混ざった先頭グループが、最終コーナーへとさしかかります。
さぁ、ラストスパートです!
みんな、最後の力を振り絞って走り抜けようとしています!
 
ゴールテープが切られ、1位がゴールしたことを告げる鐘が鳴り響きます。
会場は大歓声と拍手喝采に包まれました。

今年の星駆け祈願の1番は……グナーです!!!

「やったのだ~! さすがグナー!」
「うんうん、特訓の成果をしっかり出せたね!」
 
グナーの長所、スタミナの多さを生かした作戦でした。
長く走るのをわかっていたので、同じ速さで長く走れるようにペースを維持していたのです。

一位になったグナーには、おおいぬシリウスの絵が刻まれた金メダルが授与されます。グナー、おめでとう!

「バーツ! フロッケ! 1位になったよ~!」

表彰式が終わって、ふたりに駆け寄るグナー。
嬉しそうに1位のメダルをふたりに見せます。

「「おめでとう、グナー!」」
「特訓のおかげだよ、本当にありがとう!」

グナーは感謝しても感謝しきれないといった様子です。

「いいのだ、それよりも」
「そんな頑張ったグナーにごほうびタイムだよ」
「え?」

「「出店にあるグナーの好きなもの、いっぱい食べていいよ!」」 

皆さんは、自分にごほうびをあげるなら何がいいですか?


4.冬に備えて準備しよう

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場所は変わって、たくさん倉庫が並んでいる区画です。

時刻は日も沈んだ夕方。すっかり冷え込んでいます。
寒い風が吹く中、倉庫の周りやその中で、カガンズたちが何やら作業をしています。
冬を越すための保存食などを作っては、倉庫に運んでいるようですね。

おや、むこうの納屋の前に、コワイ、ブイ、モフの姿がありますよ。
どうやら収穫した作物を加工しているようですね。

「今年は作物が多いなぁ。多いのはいいことだが…時間がかかりそうだぜ」
「あっ、シチューのいいにおいがしてきたね~」
「そういえば、おいも組の納屋は準備ができたらしいよぉ」

お話をしながら作業をしていますね。
せっせと作物の加工を進めています。

「よし、食べ物の加工はこれで全部だな! ブイ! モフ! 運ぶぞ~」
「ブイはお腹すいたよ~」
「モフはおねむだよ~」
「おう。作業が終わったらな」

次は納屋に作物と保存食を入れる作業です。
ブイもモフもお腹が空いていたり、眠かったりしていますが、コワイ一人に任せるわけにはいきません。
コワイは作業を一緒にしてくれているふたりを励ましながら、納屋に手際よく荷物を納めています。

「ブイ、作業が終わったら、
 あったかいシチューが待ってるぞ。がんばれ~」
「シチュ~」

お腹をぐぅぐぅ鳴らしながら、ブイはコワイに荷物を手渡します。

「モフ、シチューを食べたら、気持ちよく眠れるぞ」
「おふと~~~ん」

モフも眠そうになりながら、コワイの近くに荷物を運びます。

コワイは、てきぱきと働いて納屋に荷物を納めきりました。
最後にきちんと荷物が納まっているのを確認して、コワイは納屋の扉を閉じました。これで3人の作業は終わりですね!

「二人ともお疲れ! 全部入れ終わったぞ」
「「おわった~」」

ブイとモフは抱き合いながらその場でへたれこんでしまいます。

「がんばったふたりに、これをやるよ!」

そう言ってコワイが差し出したのは、お水と、さきほど加工していた保存食でした。

「あっ、ブイが好きなやつだ」
「モフも好きなやつ~。あれ? でも、食べていいの?」

いつもなら、「つまみ食いはダメだ!」と、コワイは言っています。

「つまみ食いはダメだ。でも、これはふたりのために、残してたやつだ」

そう、コワイは保存食の残りを取っておいてくれたのです。

「みんな、がんばったからな!」

コワイがにっこりと笑うと、互いを見合うブイとモフ。
そして、うなづくと、ふたりはコワイに保存食の一部をちぎって渡します。

「「一番がんばったのは、コワイだよ!
 励ましてくれてありがとう! 一緒に食べよう!」」
 
本当に思いやりのある子たちですね。おいしそうに食べています。

喜びを分かち合える友だちって、とても素敵ですね。


5.冬を迎えよう

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今夜は、お月様が大きく見える夜。
幸いなことに、夜空は晴れていて、お月様がはっきりと見えています。
空気が澄んで、お星さまが光っているのもよく見えますね。

キラキラと輝く月明かりの下、つながる広場にカガンズたちが集まってきました。
広場の真ん中には大きなお鍋がぐつぐつと煮えています。

シリウスが一番気に入ったのはシチューだと言われていて、シリウス祭の最後には大鍋シチューを振る舞うのが恒例なのです。
シチューを配る子、シチューをもらおうと並んで待っている子、シチューをもらって味わっている子。
お話をしたり、食べていたり、とても賑やかですね。

あ、皆さんが知っているカガンズたちも広場にいますね。

記念写真を見せにきたマーチ、ホーン、セン。 

星駆け祈願の結果報告をしている、グナー、バーツ、フロッケ。

できあがったシチューを配るロクメ、テイル、マル。

お腹ペコペコでやってきたコワイ、ブイ、モフ。

みんな、冬を迎えるイベントを楽しんだり、頑張ったようですね。
熱々のシチューを食べて、温まりましょう。
おや……歌が聞こえてきました。

 おおいぬシリウスおいでませ

 おおいぬシリウスかけぬけろ

今年もやってくるであろう、シリウスを迎える準備ができました。

さぁ、これから寒い季節が訪れます。
皆さん、冬を過ごす準備はできていますか?

絵・監修:いぜむ
シナリオ:小鳥遊悠司
SpecialThanks:にこらん