ドッペルさん - 1/23

ああ、退屈。

何か変化が起きて欲しいと思う。

退屈ならそれを解消すべく行動すればいいと言う人もいるだろうけれど、私にはそれが出来ないからこそ退屈なんだ。

みんなだったら、外出して友達とたわいのない会話をしながら街を練り歩き、ちょっとした買い物を楽しむのだろう。

でも、それが私には出来ない。だって、私は不登校の引きこもりだから。

引きこもり歴、約一年半。

まさか、その日自ら変化に立ち向かうことになるとは思いもしなかった。

 

勘違いして欲しくないのは、私だって今のままでは良くないって自覚くらいはあるってこと。

いじめられていたわけでもないし、成績が悪いわけでもなかったんだけど、どうしてか学校に行くのが億劫でしょうがない。それどころか、恐くて家から出られない。

そんな私を心配してくれて、友達も家に来てくれる。一応、友達はいる。

だから、部屋は彼女たちが遊びに来てくれるように、整理整頓はしているつもり。ひきこもりだからって、部屋の中が散らかし放題とは限らないってことを頭の隅に記憶しておいて欲しい。

上下ジャージ姿でベッドから出て、テーブルに置いているメガネをかけると窓を開けた。

窓を開けると、外から朝日が照らされてちょっと眩しい。

夏が終わりつつあって日差しが弱くなったとはいえ、朝日は相変わらずだ。

二階にある私の部屋の窓から見下ろすとちょうど小川が目に映る。

地方ということもあって、その小川は澄んだ色をしている。昔は、生活水として使っていたって話だけど、さすがに現代では生活水としては使いたくないわね。

小川を流れる木の葉を眺めていると、小川をまたぐように造られた小さな橋に目が行った。

その小橋の上を学校指定の長袖のブレザーを着ている女子が二人喋りながら歩いていた。友達の春香と美里だった。

彼女たちの服装を見ると、もう季節は秋になったんだなと感じられずにはいられない。ちなみに私は去年の春から引きこもっているので長袖の制服そのものを着たことはない。クローゼットの片隅に追いやったままにしている。

私が窓際に立って小川を眺めているのに気付いたようで、二人は私に向かって手を振る。

「雅美ぃ! おっはよー!」

「美里ちゃん、声が大きいよぉ」

近所のことなんてはばかることなくバッグを片手に大声で手を振るのは長身で元気一番の美里で、恥ずかしそうに弱々しくなだめているのが小柄で控えめな春香。

私も、大声で名前を呼ばれると恥ずかしい。ただでさえ、引きこもりってことで近所では話題に事欠かない私の名前を堂々と叫ばれると、さすがに……