真山から身につけておくように言われたイヤホン型のデータ送信機により、送信されたデータが第六班の端末に収集されている。
数日間、出来る限り身に着けていたことで、和沙が感じるという第四の快楽の発生条件がわかった。
だいたいが、恭治が起床する際で、さらに深い眠りであるノンレム睡眠が長かった睡眠後に発生するのだ。
和沙の証言によると、意識が吹き飛ぶように気持ちいいということだった。
それは、恭治が和沙に肉体を支配される時に感じる意識を失うような感覚とは違うようだ。
恭治は眠るように意識を失うが、和沙は意識が消えるような感覚だと語る。
「わかりにくいかもしれませんが、二酸化炭素を直接吸い込むと、意識が飛びそうになりますけど、それに近い感覚ですね」
『くらっ……あ、気を失う』みたいな感じだと和沙は言うが言葉だけでは表現しきれず、曖昧でしかない。
しかし、送信機から送信された恭治、及び、和沙の脳波のデータが和沙の言っている感覚を科学的に立証していた。
恭治が起床する際に、和沙の脳波がたった一瞬だが完全に消えることがわかった。
その直後に、脳波が反応を示して、通常時より活発に反応して復帰するのだった。
「この一か月間で、なかなか興味深いデータを収集することが出来たな」
真山が顎に右手を添えてうなずく。
他者に別の人物の人格を転移させるということが何をもたらすのかを知ることが出来て満足そうだった。
もちろん、これは全体実験の検証としては氷山に一角でしかないのだろうが、今回の恭治と和沙による人格転移の実験は終了することとなり、改めて和沙の人格を和沙本人の肉体へと還すことが決まった。