「狂うってどういうことですか?」
突拍子もない発言に私はややのけぞり気味になる。
義雪さんはガチで言っているのだろうか? いやいや、まさか。
「俺が俺じゃなくなってしまうって感じだな。自我が崩壊するんじゃないかな」
「えぇぇ……」
そんなざっくりとした予想と感想を言わないでほしい。明確にしろというのも無理な話ではあるが……
「じゃあ、どうすれば狂わずに済みそうなんですか?」
「多分、虚数領域に行くことができればそれで解決だと思う」
なるほど、虚数領域に行けばいいのね……
「って! 行き方がわからなくて、ずっと彷徨っているんですよね!?」
「そうだよ、最初にそう言っただろ?」
私は、愕然とした。
未知を感じられて喜んでいる場合じゃなかった。
このままだと未知の存在が狂っていくのをずっと見届けないといけない可能性だってあるということだ。
「義雪さんのほかに、実数領域を彷徨っている幽霊はいないんですか?」
そうだ、そういう存在がいれば、私なんかと話しているより、有力な情報を得られるんじゃないだろうか。
「そういえば、いたなぁ。粗暴で全然話が合わなくて、すぐに別行動した幽霊が一人……」
別行動したのはいつごろですか? 義雪さんにそう尋ねようとした時だった……
「うわぁぁぁぁ!!!!」
ショッピングホールの中心にある広場の方からいくつもの悲鳴が鳴り響いた。