既視感の色 - 6/10

できるだけ遠くに逃げようと、私が最初に店内に入った出入口へと走る。
幸い、出入口まで距離はそんなに遠くない。
「はぁはぁ……なんで、義雪さんの知り合いの幽霊はあんなに凶悪なのよ」
しかも、人の形をしていないのだ。とても同類とは思えない。
どういう原理かわからないが、宙を浮きながら歩く義雪さんは、考え事をしていた。
「あいつ、粗暴ではあったけど、あんな人に敵意むき出しにするようなやつじゃなかったんだよ」
「それってさ……はぁはぁ……さっき言ってた狂ってしまうっていうことなんじゃないんですか?」
「ああ、納得」
納得って、呑気だな。そう悪態をつこうかと思ったとき、私は奥側の廊下の壁がカラフルに光るような感覚を覚えた。
ヤバいと立ち止まり、本能的に察した。

私の感覚は正しかったので、回れ右して来た道を引き返すように逃げた。
壁の中から化け物が出てきたのだ。先回りされていたのだ。

「なんで、わかったんだい?」
義雪さんが不思議そうに尋ねてきたので、ムッとしながら答える。
「義雪さんに未知感を覚えたんだもん、あの化け物にも感じると思ったの!」
せっかく、逃げられると思ったのに……よりにもよって、ここはフロアの端っこだ。
こうなったら、上に逃げる!