私と春香がショッピングモールに辿り着いた時には、美里は入り口で大きく手を振っていた。
駆けつけた私たちに、清涼飲料水を一本ずつ渡してくれたのでありがたくいただいた。
さすがに、これだけ走り続けると喉が渇いてしょうがない。そういうところに気が利く美里。あとは、場所をはばからず大声で名指しするのだけ控えてくれればいいのにと、いつも思うけど口にしない。
捕獲対象であるドッペルさんは、現在ショッピングモール内の四階にあるCDショップで新曲の試聴をしているらしい。
ヘッドホンを付けて聞いているので、周りの音に反応しづらい状態の彼女を多少近いところで監視していても気取られることもなかったそうだ。
美里は、CDショップで一気に決着をつけようと提案してきた。
CDショップは入り組んでいるので、いくら足の速いドッペルさんでもトップスピードで逃げることは難しい。
それに、棚があることで身を隠しながら肉薄出来ることも考慮した上でのことだ。
エスカレーターで四階に上がり遠くから観察してみると、確かにドッペルさんが試聴していた。機嫌がいいのか、リズムに合わせて頭や身体を振っている。
これなら気付かれにくいかもしれない。
「雅美、あんたが無理して外に出てきたんだもの。捕まえたらクレームの一つや二つ言ってやりなさい」
「う、うん」
何を気負っているのよ、と美里に言われたけど、ドッペルさんに対して何か引っかかることがある。それが何なのかは私自身もはっきりとはわからないのだけど……
「雅美ちゃん、必ず捕まえようね!」
春香もかなりやる気になっている。その言葉を聞いてハッとなった。
私も怖気づいている場合じゃない。実際、とばっちりだって受けてるし、出たくもないのに無理矢理祖外に出ることになったんだから。
必ず捕まえて問い詰めてやる。