ずっと引きこもってて、外の世界をほとんど知ろうとしなかったし、知ることが出来ていなかった私は、外に憧れがなかったわけじゃない。
恐怖もあったけど、やってみたいことがたくさんあった。
今日母さんに無理矢理外に出されるまでは、出たくても身体と気持ちが拒絶して玄関の戸を開けることすら叶わなかった。
その間、憧れはずっと溜まっていた。
私がしたかったことをドッペルさんは代弁していたり、代わりにやろうとしてくれていた。
何より、美里と春香と一緒に色んなところに行きたかった。
いつも心配して私の様子を見に来てくれる優しい友達二人だもの。どこかに行けたらいいなって思うのが当たり前だ。
形は違えど、それを叶えてくれたのは他でもないドッペルさんだった。
「だから、あんたが雅美を困らせているのは事実なんだから、そんなわがまま言ったらダメでしょ! 雅美だって困ってるんだから、やりたいなんて言うわけないでしょ! ねぇ、雅美」
「ドッペルさんのしたいこと、しよう」
「ほら、しようって言ってるでしょ。え? しようって、今言った?」
美里が私の発言が意外で聞き返してきた。まるで、よくドラマとかで見るようなやり取りをしてしまったので、少しおかしかったけど、顔は真剣なままにして言った。
「ドッペルさんがやりたいことって、結局は私がしたいことと一緒なの。だから、私はドッペルさんのやりたいことに付き合うわ」
「雅美ちゃん……」
春香が瞳を潤ませながら、抱きついてきた。
「やっぱり、したくても出来なかったことがたくさんあったんだね! 今日は私も付き合うよぉ」
「ありがとう、春香」と言いながら私も春香を抱き締めた。
ドッペルさんは、にやにやしながら意地悪そうに美里を見た。
「雅美と春香は、私に付き合うって。美里はどうする?」
メガネこそかけていなけど、私と瓜二つのドッペルさんにそう言われると、さすがの美里も怯んだ。
自分だけ置いてけぼりにされたような感じで悔しかったのか、美里はそっぽを向きながらか細い声で言った。
「雅美本人が付き合うっていうんなら、私だってやぶさかじゃないわよ」
「美里はツンデレだねぇ」
「ドッペルさん、あんたに対してツンはあってもデレは決してないから! そもそも、あんたの願いじゃなくて、雅美本人の願いなんだから」
それを耳にしていた私と春香はついつい吹き出してしまい、美里が機嫌を損ねて、それをドッペルさんが面白がっていた。