食事を済ませると、私たちの足は自然とショッピングモールの出入口に進んでいた。
出入口はほとんど人がいなくて、時が止まったようにも思えるほどに静かだった。
前を歩くドッペルさんが大きく伸びをした。
「さて、私の役割は終わったから、私も終わりにしないとね」
その言葉でそろそろドッペルさんとのお別れが近づいていることも何となくわかった。
寂しいとは思わない。だって、彼女は私の分身だと言っていた。ということは、あるべき場所に戻るだけだから。
美里が何か声をかけようとしていたけど、春香が左手で制止したので二人とも口を閉ざしたままだ。
私もどんな言葉をかければいいのかわからなかったから、少し考えてようやく言えることが思いついた。
「ドッペルさん、確かにはた迷惑なことされちゃったけど、今日はそれなりに楽しかったよ」
ドッペルさんは、決まりが悪そうに頭をかいてから私を見つめて笑みをこぼした。
「確かに迷惑をかけたわね。でも、これであんたが少しでも外に出れるようになったら、私が現れた甲斐があるってものね」
「うん、毎日ってわけにはいかないけど、出来るだけ努力してみる」
私が頷くと、ドッペルさんは手を差し出した。私も右手を差し出す。そして、互いに手を握り合った。
手を離すと彼女は、私の横にいる親友たちに声をかけた。
「この子のこと、よろしくね。あなたたちあってのこの子だから」
「言われなくたって、わかってるわよ」
美里は拗ねたままだけど、言葉を付け加えた。
「あんたが発破かけてくれたから、雅美にとってもプラスになったと思うわ。それは感謝する」
「美里ちゃんは素直じゃないね。ちゃんとありがとうって言えばいいのに」
「うるさいわね」
ふん、鼻を鳴らしてもっとむくれてしまった。でも、後ろめたさがあるのは見え見えだ。
「ドッペルさん、私からも雅美ちゃんの友達としてお礼を言わせてください。本当にありがとう」
春香は深々とお辞儀をした。本当に礼儀正しい女の子だと思う。
二人の様子を見たもうひとりの私は一度頷くと、私の右肩をポンと一度叩いて、私の後ろ側へと歩いて行った。
振り向くと、彼女の姿はなかった。