第六班の研究室がある特殊研究棟に赴くと、早速休暇中にあった変化などの経過観察のレポートを真山に提出した。
「何だ、烏丸。遊びで疲れを出すなんて、よくないぞ」
先ほど先輩にも釘を刺された顔に出ているということを、真山に再確認させられた。
「まぁ、それはいいとして、連休中の経過を確認させてもらおうか」
真山が日にちごとのレポートを一枚一枚めくっていくが、ある日のレポートで目を止めた。
「ふむ。綾辻が肉体を支配するレベルで表に出る場合は、烏丸の意識が瞬間的に失われるか……」
「はい、だとすれば、僕と和沙は同一の地位にある人格同士ではなく、どちらかというと和沙が交代人格に近いものだと思います」
また、和沙としては重要ともいえる事象についてもレポートに記してある。そのことは、和沙が表に出てレポートの捕捉をする。
「私が感じる第四の快楽ですが、恭治が睡眠から覚醒した直後に感じることが多かったです。ですが、毎朝覚醒するたびに感じるわけではなく、他に存在する条件もクリアすることで発生するものだと思われます。それが睡眠時間なのか、睡眠の環境状態が原因なのかは私たちだけでは計りかねます」
「そうか。それに関しては、ここで検証した方が効率的かもしれないな」
真山の言葉に和沙も恭治も同意見だった。
検証するのなら、自分たちだけではなく、客観的に物事を見る第三者の視点が必要となるだろう。
さすがに、睡眠時の状況を二人に把握することなど不可能だ。だからこそ、研究所で検証した方がいい。
「睡眠時の検証だが、今すぐにとはいかないからな。だが、許可が出たらすぐにでも行おう」
真山が話を締めたので、恭治が自分のデスクへ戻ろうとしたその時だった。
「たのも~! ムッシュ烏丸恭治はどこだ~!」
女性、いや、年齢的には女の子と表現するのが適切だろう声が第六班の研究室に響いた。
同時に第六班のメンバー全員は声が発せられた方向へ振り向いた。
そこには、蒼い瞳をした漆黒のロングヘアーで黒い服を着込んだ美少女が仁王立ちしていた。