プロジェクト・メメントモリ 中編 - 10/25

「ということで、ここに長居は無用ってこと。バレたら本当にヤバいからね」

それだけ言うと、恭治は制御室に接続させていた電子端末のコードを抜き取ると、その場をすぐに去った。

当然、帰りも監視カメラの死角を通って、自分たちの個室へと戻った。

個室に戻ると、ベッドへ放り投げていた耳に付ける機器をすぐに付け直した。機器を付けていなかった時間は十分足らずだったので、シャワーを浴びていたと言い訳すればいいと考えていた。

恭治が思いつきで実行した無計画な行動で、思いも寄らなかった真実を知った和沙の気持ちは沈んでいた。

推測ではマリーがルイーズ元所長であるという可能性を知った。しかし、だからといって、恭治はどうするというのだろう?

それに対して恭治はきょとんとした表情で言葉を口にした。

「ん? どうしたものかね。真山さんを追求したとしても何かが変わるわけじゃないしね」

「何も考えてないの?」

「僕は興味本位で調べただけに過ぎないよ」

その言葉に対して和沙は呆れきった。興味本位だけでこんなリスクを背負って行動を起こしたというのか。

恭治は、普段はそんなに積極的ではないが、あることに興味を抱くと信じられないくらいに積極的に行動をするのだ。しかもそのほとんどが、無意味なことに対してだ。

恭治は身を投げるようにベッドに寝転がって、天井を仰いだ。

「知っちゃいけないことを知ったかもしれないし。もしかしたら、僕たちが消される可能性があるかもね」

その一言に対して、和沙は表に現れると大きくため息をついた。

「呆れた。そんな危険があることを知った上でクラッキングを行ったなんて」

「興味を抱いた事象に対して、調べつくすのは科学者の本分でしょ? 僕は知りたいから調べたに過ぎない。まぁ、どう転がるかなんて考えてないのは、確かに軽率だったかもしれないけど……」

それこそ、マリーの秘密を知った今、研究所から消されてもおかしくはないだろう。

やはり天井を仰いだまま、恭治は虚ろな表情でつぶやいた。

「日本支部には配備されてないけど、フランス本部にはあるからなぁ。サンクシオン機関が……」

他人事のように語る恭治に対して、和沙は現実を見ている様子だった。

「あの機関に目をつけられたら、真剣に不味いじゃないの。本当に消されちゃうわよ」

「まぁ、日本支部までに介入権があるかどうかだよね。それに実在するかどうかも怪しいところだし、大丈夫じゃない?」

恭治は大丈夫だと言っているが、和沙はやはり不安だ。