プロジェクト・メメントモリ 中編 - 13/25

十五歳の肉体には見えない干からびた皺だらけの老人相応の手を出てきた。

「この醜い手を見ただけでも欠陥品だということがわかるだろうけど、欠陥はこれだけじゃないのよ。新陳代謝や自己治癒力もかなり低下しているわ」

傷の治りが悪く、一度出血するとなかなか止血せず、血管も細くなっているそうだ。

さらに、脳にも疾患が出る可能性がまだ残っている。クローニングでさえ肉体を代替することが出来なかった上で、さらに替えの利かない脳に死の恐怖を抱くことになってしまった。

このまま、中途半端に延命の希望を抱き、中途半端な希望のせいで絶望しかけたところで、真山が提唱したプロジェクト・メメントモリの詳細を耳にした。

この実験が成功すれば、替えの利かなかった脳すら破棄して、別の健康体の人物に転移することが可能になるということだ。

人格転移の実験が行われるまで、ルイーズは死を先延ばしするために一度マリー体をコールドスリープさせることにした。

そして、恭治と和沙を実験体とした人格転移の実験が行われたことでコールドスリープを解除し、その経過を観察するために来日した。

「ところが、実験は行き詰まっているようね。恭治の脳から和沙さんが元の身体に戻ることが出来ないなんて……私は、何度も転移を行えるようにしたいのよ。そうすれば、永遠の命を手に入れられるのだから……」

待ち焦がれるようにマリーが語る最後のワードに恭治は眉をひそめた。

「永遠の命?」

思わず表に出てきて不愉快そうに言葉を返した和沙だったが、ルイーズには否定的な感情が伝わらなかった様子だった。

むしろ、永遠の命という単語に反応して、高々とした口調で歪んだ笑みを見せる。

「ええ、永遠。それが可能ならば、私は永遠に研究を続けることが出来る。私でなければ出来ない研究があるの。私の部下では任せるに値しない大事なものばかりなのだから」

歓喜の表情を隠すことなく、遠慮なく見せるマリー。

その様子に和沙は失望しつつも恐怖を感じた。

「マリーさん、いえ、ルイーズさん。あなたは私利私欲のためにプロジェクト・メメントモリを利用するのですか?」

私利私欲という言葉にルイーズは反応し、恭治の肉体の表に出ている和沙を睨みつけた。

「私利私欲ではないわ! 私が延命を行うのは、私が生き続けて研究を続けることで新たな医学の開拓を行うことが出来るからよ。私があえて、生という苦しみを味わい続けることを選んだのは他者のためよ。勘違いしないで!」

そう叫ぶルイーズだが、生という偏った妄執に囚われているのは明らかだった。そして、その理由動機を他者のせいにしていることもはっきりとわかる。

彼女はその程度の人間なのか?