私の質問に対して、光稀くんはありえないといった表情をした。
「え? わざわざ、虚数領域に行きたいの? 恐いもの知らずだなぁ」
「ということは方法はあるのね!?」
私は期待に胸を躍らす。
ところが、光稀くんの反応は微妙だった。
「うーん、少なくとも僕は知らないんだよなぁ。でも……」
「でも?」
「ノトリアの門を実数領域側で見つけることができたら、さっきの言葉で門を開けば行けるんじゃないかな? 門が実数領域と虚数領域を行き来する境界なんだから」
言われてみれば、その通りだ。
ノトリアの門さえ見つけられたら、もしかしたら、義雪さんがいる虚数領域へ行くことができるかもしれない。
「葵さん、なんで虚数領域へそんなに行きたいの?」
「もう一度、会いたい人がいるのよ」
私は、半年前の出来事を光稀くんに話した。
「そういうことかぁ、その人に助けられたから門を開く言葉がなくても脱出できたんだね」
私はこくりと頷く。
「ぶっちゃけ、わざわざ自分から虚数領域に行くのは無謀だよ」
「わかってる、あそこが危険な場所なのはわかってる」
既視感ではなく、他の誰でもない私自身の体験として。
「だったら、止めないよ。どうしても、その人に会いたいんでしょ。行ってきなよ」
「ありがとう」
「まぁ、門を見つけられたらの話だね」
光稀くんの言う通り、どこにあるかはわからない。だけど、私が門を開くのなら場所は決めている。
ここだ。ニクスモールに決まっている。
だって、義雪さんに出会った場所だから。
「光稀くん、色々教えてくれてありがとう。私、虚数領域に行ってみる」
「うん、頑張って! 無事に帰ってくるんだよ」
私は光稀くんと別れて、その場をあとにした。
去り際に、光稀くんが寂しそうに小さく何かを呟いたようだけど、聞き取れなかった。
「僕も行けるなら……義雪兄さんに会いたいな……」
Next will be the final episode…