話しかけてきたのは、通路の反対側に立っている私より少し年下っぽい青年だった。
見た目は、金色の髪が特徴的で、背も高い。しかし、いけ好かない顔をしている。
店舗と店舗の間に、ブースを構えて何かしているらしい。
よく見ると占いでもしているのか、カードやらが並べてあった。
私が未知を感じたのは、構えているブースに並んでいるカードと彼自身からだった。
私と目が合うと、その青年がにっこりと笑って手招きした。
私はつられるように青年に近づく。
青年は、私が近くまで寄ってくると、椅子に座ってこう言った。
「良かったらお姉さんを占わせてよ。お金はいらないからさ」
唐突に勝手に話を進める青年に私は再びイラっとする。
「いきなり、君はなんなのよ。私、占いとかそういうの信じてないんだけど?」
「そんなこと言わないでよぉ。多分、お姉さんの予想外な結果になるからさ」
やはり、彼は私のことを置いてけぼりにして、話を進める。
ただ、予想外な結果という言葉には興味が湧く。
青年は、カードの束を広げながらシャッフルし始めた。
そのカードに書かれている文字に私は違和感を覚える。
「私、その文字、知らないと思う」
「それはそうじゃない? 今では誰も使っていない文字だからね」
「そういう意味じゃないんだけど……」
私にとって既視感を覚えないという意味で言ったけど、まぁいい。
彼に話したところで理解はできないだろうから黙っておく。
私は、文字を読むことができなくても、既視感を覚える。
でも、カードに書かれていた文字は私にとって未知のものだった。
なぜ、知らないと感じるのだろうか?
私は頭の中の疑問に答えを出せないままでいると、青年はカードの束をまとめて、一枚カードを取り出した。
「どんなカードが出たと思う?」
彼は真剣な口調で問いただす。
問われて私は、はぁ? と口に出してしまう。裏面しか見えていないから私には何のカードか見えない。
そもそも、私はどんなカードがあるのか知らないんのだから、答えようがない。
「さぁ? タロットカードとかだったら、わかるけど見当もつかないわ」
「こんなカードが出たよ」
そう言って青年がカードをひっくり返す。
カードは絵や文字が何も描かれていない白紙のカードだった。