未来視の声 - 4/10

「白紙のカード……?」
青年は黙ったままうなずく。やはり真剣な表情で。
「たまたまじゃないの? 誰だって、出る可能性があるでしょ」

「それがそうじゃないんだ。僕の占いは特別でね。あっ、そうだ! そこのお兄さん、ちょっとこのカードめくってもらえませんか?」
そういって、青年は白紙のカードを伏せて、その辺りを歩いている男性にカードをめくらせた。
すると、不思議なことに白紙のカードは何やら夜空に浮かぶ三日月のようなデザインのカードに変化していた。
その行為にも未知を感じた。
「このカード、何?」
「僕、占いをやっていまして、三日月のカードが出たということはあなたの悩みにわずかな光明が差す兆しを示しています」
青年は男性と会話を進めて、占いの結果らしいことを語っていた。
「まぁ、占いは外れることもあるので、あなた次第ということです」
手を振って、男性を見送ったので私は問いただした。
「で、何がしたかったの? あなた手品師かなにか?」
「じゃあ、お姉さん、本題に入ろうかぁ。その三日月のカード裏面にせず、そのまま手に取ってみて?」
質問に答えない青年にうんざりしながら、私は言われた通り、そのままカードを手に取った。
「え!?」
私は声をあげずにはいられなかった。
私が手に取った三日月のカードは瞬時に白紙のカードに変化していた。
「手品でもなんでもない。僕が持っているカード見るといいよ」
そう言って、広げられたカードは全て白紙のカードだった。
「実は、このカードには特殊な力があってね。触れた人の運命が見えるんだ」
唐突にオカルトめいた話をしているが、私は彼の言ったことを信じた。
真剣な目が嘘をついていないことを示していたし、私はすでに半年前、不思議な体験をしているからだ。しかも、この場所で。
「なるほど? だから、さっきの男性は三日月が出たと。で、私は真っ白なのはどうしてなの?」
青年は首を横に振る。
「わからないんだ。お姉さんの運命は僕には読めないんだよ」