そのタイミングでようやく青年は名前を教えてくれた。
「僕は光稀(こうき)。運命を読む力で占いをしている学生だよ」
今頃になって名前を名乗るかと言いたかったが、ちゃんと名乗ったから良しとしよう。
「私は葵。一応、社会人」
自己紹介もそこそこに、光稀くんは不思議そうな顔をした。
「葵さん、僕が話すことをあっさり信じてくれるんだね。結構意外だったよ。なんか、騙されてツボ買わされそうなタイプだね」
と、最後に付け足す光稀くんは一言余計だ。
私はそっぽを向いて、むすっとした表情をする。
「私だって、胡散臭いと思わないわけじゃないけど、私にも思うところがあるのよ」
「え、何か気になることがあるの?」
「私、物心がついたときからずっと既視感に囚われているの。初めて未知を感じたのは半年前だった」
「既視感か……」
私の特性を聞くと、光稀くんはしばらく考え込んで尋ねた。
「葵さんは、その既視感に囚われていることに、思い悩んでたの? 共感を得られないとか、孤独を感じるとか」
「孤独感はあるかなぁ。誰にもわかってもらえないってことは世界から置いてけぼりにされているみたいじゃない? だから、私、未知を感じるものを何としても見つけ出してやろうと思った。けど、全然見つけられなかったけどね。半年前まではね」
「なんだか、分かる気がするよ。僕の一族は人の運命を簡単に知れてしまうから、それを理解してくれるのは身内以外いないんだ」
光稀くんの話す内容には既視感のようなものを感じない。どれも真新しくて、私が本当に知らないと感じる内容ばかりだ。
「カードで運命を知ることができるのはわかったわ。だけど、どうして、私の運命を知ることができないって気づいたの?」
そう、彼は変化する白紙のカードを使って、人の運命を知ることができるようだけど、それが私には不思議だった。
すると、光稀くんは戸惑った顔をしながら声を発した。