「僕らの一族はね、人々の運命の声を読むことができるんだ。それを可視化したのが、このカードなんだ。だけど、葵さんだけは運命の声が読めなかった。だから、声をかけたんだ」
彼らの一族は、運命の声を聴くのではなく、読むという。どの五感にも当てはまらないので、運命の声を読むと表現しているらしい。
そういう読み取る能力を彼らは未来視と呼んでいるそうだ。
運命の声を読む未来視。
語感が悪いことに違和感があるのは、一般的な感覚なのだろうか、それとも、私の特性によるものだろうか?
その話を聞き終わって、私はハッと気が付いた。
それって、つまり私が近いうちに死んでしまうのではないかと勘繰ったからだ。
すると、光稀くんは手を振って否定した。
「あ~、違う違う。違うからね? 葵さんがすぐに死んじゃうってことじゃないから! 近々死ぬ人からも運命の声は読めるんだから」
「じゃあ、一体どういうこと?」
光稀くんは一度首を傾げたあとに、にこやかにこう言った。
「それはぁ、葵さんがこの世界の人間じゃないってことじゃないかな?」
その一言に私は、何故か今日一番の既知を感じた。
なんでそうなる、とか、ありえない、とかそういう疑問や否定の言葉が先に浮かぶと私は思っていた。
しかし、真っ先に脳裏に浮かんだのは、「そういうことか」という納得したような言葉だった。
「あれ? 慄く姿を予想していたんだけど、意外に落ち着いててこっちがビビるんだけど……なんで?」
「私も不思議なくらいよ。妙に納得している自分がいるんだもん」
「それは既視感によるもの?」
彼の問いに、私は頷くしかなかった。
そして、ふと思った。
「今までに私みたいに運命の声を読めない人っていたの?」