「いや、少なくとも、今まで僕は一人も出会ったことはなかったよ。ただ……」
「ただ?」
なんだか言いにくそうな口振りだなぁ。
「一族の何代かに一度は出会うことがあると言われているんだ。葵さんみたいな人のことを僕らの一族はリベルの民って呼んでる」
「リベルの民……」
初めて聞く言葉なのに、私は懐かしさのようなものを感じた。
ただ聞き覚えがあるというだけじゃなく、何か大切なものを思い出したような懐かしさと寂しさを嚙み締めた……
そして、義雪さんのあの言葉を私は思い出す。
『いいかい、葵。君が既視感に囚われているのは何か理由があるはずだ。何か意味があるはずだよ』
義雪さんが言っていたことがここでやっと繋がった気がした。
光稀くんによると、リベルの民というのは、家系のように代々繋がって現れる存在ではないらしい。
突然、現れる存在らしく、そこに家系や血筋のようなものは関係ないとされているとのこと。
それこそ、まるで突然変異のように。
だから、私の両親は既視感の色を感じることがなく、祖父母からもそういった話を聞いたことがなかったのだろう。
「葵さん、僕らの一族はリベルの民と出会ったら、伝えないといけないことがあるんだ」
「え? なに?」
「葵さんの特性を知っているけど、それを踏まえて質問するね」
「うん、いいけど、なに?」
「虚数領域という言葉を本当の意味で知ってる?」
まさか、光稀くんの口からその言葉を聞くとは思いもしなかった。