未来視の声 - 8/10

私が目を丸くして黙っていると、光稀くんは理解したようで……
「やっぱりかぁ……虚数領域の存在を知っているんだね?」
私は頷く。
虚数領域。私がいつの間にか迷い込んでいて、義雪さんが身を挺して助けてくれた場所。
迷い込んだのは、正にここ。このニクスモールで起きたことだった。
「リベルの民は虚数領域と密接に関係していると言われているんだ」
「どんな風に、関係しているの?」
「リベルの民は虚数領域からやってきたんじゃないかって考えられているんだ」
光稀くんのセリフに言葉も出なかった。
さっき言っていた、『葵さんはこの世界の人間じゃないってことじゃないかな』その言葉そのものだった。
わかったような気がして、私は自分の感覚に恐さを感じた。
受け入れがたい事実なのに、なぜここまで理解できるのだろうか?
既視感によるものだとわかっていても、私の感情はそれに対して納得できなかった。
そんな私をよそに光稀くんは話を続ける。
「リベルの民は元々虚数領域から来たと考えられている。だから、たまに彼らは虚数領域に迷い込んでしまうことがある」
「私、迷い込んだことあるから、虚数領域を知っているよ」
そう伝えると、光稀くんはかなり驚いたようだ。
「うわ、マジで? よく無事に戻ってこれたね」
「そうだね……それで、私に伝えたいことって何?」
「虚数領域に迷い込んだ時にこちらの世界に帰ってくる方法だよ」