「要するに虚数領域から脱出する方法?」
「そうだよ。虚数領域とこちらの世界である実数領域の境界にあるノトリアの門を開くことができれば、こちらに帰ってこれるんだ」
「ノトリアの門……それってどんな形をしているの?」
光稀くんは首を横に振る。
「言い伝えによると、何かしらの出入り口の形をしているものらしいよ。詳しいことはよくわからない。だけど、それがノトリアの門だとわかれば、ある言葉を唱えると、門は開かれると言われているよ」
その門というのは、以前、私を逃がすために義雪さんが開いてくれた自動ドアがそれだと推測した。
「それで、門を開く言葉っていうのは?」
「うん、今から言うから、よく覚えておいてね」
そう言うと、ゆっくりと言葉を口にした。
『深淵の鎖に囚われし門よ。今、その鎖に断ち切る楔を打ち、解き放たん』
少し長いと思ったけど、自然と覚えられた気がした。
「それにしても、向こうに行ったことがないのに、光稀くんやその一族はやたらと詳しいのね」
「ああ、それはね、僕らの一族の始祖がリベルの民から教えてもらったからっていう言い伝えがあるよ」
「なるほど?」
始祖や昔のリベルの民は後世に現れるかもしれないリベルの民を助けたかったってことかな。
ふと、私は思いつきで聞いてみた。
「ねぇ、逆に虚数領域に行く方法を光稀くんたちは知っているの?」