ジャメヴ - 2/10

 

「元気にしてた?」

 カフェで注文したアイスコーヒーをストローでかき混ぜながら優しく微笑む楓。

 俺は出来るだけ楓と目を合わせないように、少し視線をずらして答える。

「ああ、ぼちぼちかな。ただ……」

「ただ?」

「楓と別れた後、いろいろと思うところがあったよ」

 かき混ぜていたストローの動きが止まる。楓が俯く。

「そっか……それだけ私は、和義くんのことを傷つけちゃったのかもしれないね」

 どうやら、一年前に俺を振ったことを彼女なりに気にしていたのだろう。

 彼女が言ったように、俺もそれだけ別れたことがショックだった。

 でも、付き合っていた時期は短くはないけれど、そこまで長いといったものでもなかったはずだ。

 多分、一年半くらいの交際期間だった。だけど、一年前突然、楓の方から別れを切り出された。

 何か相談があったわけじゃなく、ただ「ごめんね、別れたいの」と言われただけだった。

 その時、俺は「別れたくない」と言ったのか、素直に応じたのかも思い出せない。

「まぁ、ショックだったから記憶があやふやになっているのかもな」

 まるで他人事のように無遠慮に答える俺自身に正直驚いた。

「それで、一年振りにどうして会いたくなったんだ? まさか、寄りを戻そうとか言うんじゃないよな?」

 もし、そうだとしたら、期待してもいいのかな。

 すると、楓は俯いたまま首を横に振った。

「ううん、私から振っておいて和義くんともう一度付き合いたいなんて、言えないよ」

 目元を拭っているけれど、泣いているのだろうか?

「ただ、和義くんが元気にしてるか、直接会って確認したかったの」

「それだけ?」

「うん……」

 言葉に覇気がない。嘘を言っているようには思えないけれど、本音を言っているようにも聞こえない。

 戸惑いを見せる俺に、楓はもじもじしし始めた。

「今日だけでいいの。今日だけ、一日和義くんと一緒に時間を過ごしたいの。ダメ、かな?」

 彼女と目が合った途端、俺の中で期待値が上がって、ノーと答えることが出来なかった。

「別に、構わないよ」

「本当? ありがとう」

 満面の笑みを浮かべて、手を合わせて喜ぶ少女を。確かに、それは見たことのあるはずの笑顔だった。