「元気にしてた?」
カフェで注文したアイスコーヒーをストローでかき混ぜながら優しく微笑む楓。
俺は出来るだけ楓と目を合わせないように、少し視線をずらして答える。
「ああ、ぼちぼちかな。ただ……」
「ただ?」
「楓と別れた後、いろいろと思うところがあったよ」
かき混ぜていたストローの動きが止まる。楓が俯く。
「そっか……それだけ私は、和義くんのことを傷つけちゃったのかもしれないね」
どうやら、一年前に俺を振ったことを彼女なりに気にしていたのだろう。
彼女が言ったように、俺もそれだけ別れたことがショックだった。
でも、付き合っていた時期は短くはないけれど、そこまで長いといったものでもなかったはずだ。
多分、一年半くらいの交際期間だった。だけど、一年前突然、楓の方から別れを切り出された。
何か相談があったわけじゃなく、ただ「ごめんね、別れたいの」と言われただけだった。
その時、俺は「別れたくない」と言ったのか、素直に応じたのかも思い出せない。
「まぁ、ショックだったから記憶があやふやになっているのかもな」
まるで他人事のように無遠慮に答える俺自身に正直驚いた。
「それで、一年振りにどうして会いたくなったんだ? まさか、寄りを戻そうとか言うんじゃないよな?」
もし、そうだとしたら、期待してもいいのかな。
すると、楓は俯いたまま首を横に振った。
「ううん、私から振っておいて和義くんともう一度付き合いたいなんて、言えないよ」
目元を拭っているけれど、泣いているのだろうか?
「ただ、和義くんが元気にしてるか、直接会って確認したかったの」
「それだけ?」
「うん……」
言葉に覇気がない。嘘を言っているようには思えないけれど、本音を言っているようにも聞こえない。
戸惑いを見せる俺に、楓はもじもじしし始めた。
「今日だけでいいの。今日だけ、一日和義くんと一緒に時間を過ごしたいの。ダメ、かな?」
彼女と目が合った途端、俺の中で期待値が上がって、ノーと答えることが出来なかった。
「別に、構わないよ」
「本当? ありがとう」
満面の笑みを浮かべて、手を合わせて喜ぶ少女を。確かに、それは見たことのあるはずの笑顔だった。